第10章 離婚協議書

林田唯月はライリーグループの要求を飲んだ。だが、待ち合わせ場所へ向かうタクシーに乗り込む直前、手の中のUSBを叩き折り、行き先を病院へ変えた。

自分と矢吹薫が積み上げてきたものを、灰にすることだけは――どうしても、できなかった。

病室で、林田唯月は植物状態の母の傍らに座り込む。震える喉から漏れた声は、痛みに濡れていた。

「……お母さん、ごめん……。あんなこと、私にはできない」

「昔、うちは同じやり方で潰された。二度と繰り返したくない」

「もし私がやったら……太田恵美っていう畜生と、何が違うの……?」

嗚咽が喉に引っかかる。熱い雫が、ぽとり、ぽとりと母の手の甲に落ちた。

ちょうど...

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