第15章 これはあんたが望んでいたことではないのか

 彼は膝を折り、陰鬱な顔のまま林田唯月の喉元を掴み上げた。

「林田唯月。夫婦なのは俺とお前だろ。さっきのはどういう意味だ」

 林田唯月の視線が、機械みたいに彼へ滑る。

「それ、あなたが望んでたことじゃないの。矢吹薫、満足した?」

 矢吹薫の胸奥で怒りが爆ぜ、抑えていた力が指先に流れ込む。

 息が詰まる。喉が焼ける。けれど唯月は、ふっと唇を吊り上げた。笑いながら涙まで滲ませて。

「怒ってるの? 矢吹薫、何に怒ってるのよ。むしろ嬉しいはずでしょ。離婚すれば、あなたは椎名伴凪と堂々と一緒になれる。お腹の子だって隠し子じゃなくなる。なのに、どうして不機嫌なの?」

 矢吹薫の最後の理性が...

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