第24章 ときめき

「林田唯月。暇なのか?」

その瞬間、誰かの手がテーブルにドン、とつかれ、会話を遮った。

スーツ姿の矢吹薫だった。襟元はわずかに緩み、喉仏のラインが妙に目を引く。ボルドーのブローチが、男の圧をいやでも際立たせていた。

林田唯月はその手を辿って顔を上げる。矢吹薫の瞳の奥に、ありえないはずの――露骨な嫉妬が滲んでいるのが見えた。

自分が狂ったのかと思った。矢吹薫から、そんな感情を読み取るなんて。

「暇なのはそっちでしょ、矢吹薫」

唯月は即座に言い返す。

矢吹薫の肩越しに、少し離れた場所の個室が見えた。扉は開いたまま、中には他の取引先が座っている。

つまりこの男は、相手を放り出してま...

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