第25章 俺が父親になる

『バァン!』

ハンマーが、振り下ろされた。

扉の木屑がぱっと弾け、四方へ散る。周りで野次馬していた社員たちは、思わず数歩ぶん後ろへ下がった。

林田唯月はハンマーを握りしめ、胸の底から湧き続ける怒りを、そのまま叩きつけていた。

まだ死んでもいないのに――矢吹薫は、浮気相手にさっさと自分のものを明け渡そうとしている。

男を譲れと言うなら、まだ分かる。けれど、会社まで奪われる筋合いはない。

部長の座は、降って湧いたものじゃない。終電帰りの残業も、徹夜続きの企画書も、ひとつずつ積み上げて、ようやく掴んだ場所だ。

熱くなった目の奥が赤く染まり、血の筋がじわじわと広がる。唯月はハンマーを下...

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