第32章 彼女は死んだほうがいい

矢吹薫は眉をひそめ、どうにも信じきれないという顔をした。

一歩、また一歩と距離を詰める。次の瞬間、彼は躊躇なく手を伸ばし、彼女の手首をがっしりと掴んだ。逃げ道を塞ぐみたいに。

至近距離で顔を覗き込み、汗に濡れた頬、青ざめた唇、その奥の揺れを確かめるほどに、疑念は濃くなる。

「……お前、いったいどうした」

最近の林田唯月の「おかしさ」が、走馬灯みたいに脳裏を駆け抜ける。

白すぎる顔色。胃のあたりを押さえる癖。細くなっていく身体。

矢吹薫の視線が鋭くなる。胸の底に、嫌な予感が沈殿していく。

「病気だろ。何の病気だ」

唯月の呼吸が、ぐっと沈む。額の汗が一気に増え、つう、と頬を伝って...

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