第35章 私を煩わせるな

林田唯月の胸に渦巻いていた愛情は、ふっと波が引くみたいに静まった。

「矢吹薫……知ってる? 私、ずっと思ってた。あなたを好きだって気持ちは骨に刻まれて、どんなに洗っても落ちないんだって。逃げられないんだって。あなたが椎名伴凪の肩を持っても、私を罵っても……」

唯月はゆっくり言葉を継いだ。まるで他人の話みたいに、乾いた自嘲の笑みを浮かべて。

「でも今日、分かったの。……好きか、好きじゃないかって、こんな一瞬でひっくり返るんだね」

「違う、違うんだ! 害するつもりなんてなかった! こんなことになるなんて思ってなかった!」

矢吹薫は取り乱し、言葉を重ねる。

「林田唯月、もう一度だけチャ...

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