第51章 過去は灰となる

矢吹薫は、今にも炎に飲み込まれそうなアルバムを見つめていた。

取り憑かれたみたいに、理性も何もかなぐり捨てて手を伸ばす。

掌がじゅうっと焼けついても痛みすら感じない。矢吹薫は火の中から、ウェディングフォトだけを奪い取った。

さらに別のものへ手を伸ばそうとした瞬間、周りがようやく我に返る。

太田さんが腕をつかんで叫んだ。

「旦那様! 火が強すぎます! 落ち着いてください!」

異変に気づいた使用人たちが、慌てて消火器を抱え、鉄のドラム缶へ向けて一斉に噴射した。

二分後――火はようやく鎮まった。

だが中身の大半は灰と化し、何が何だか判別もつかない。辛うじて形を残しているのは、二人で...

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