第58章 彼女の診断書

「やめろっ!!」

矢吹薫が喉を裂くように叫んだ。身体が脳より先に動き、飛びつくようにして林田唯月の手を死に物狂いでつかむ。

宙にぶら下がった唯月の体がぐらりと沈む。手首に走る、さっき裂けた傷がまた裂ける痛み。血の気が引き、顔色が一瞬で真っ白になった。

矢吹薫は自分の手を見て、凍りつく。視界いっぱいに広がるのは、鮮やかな赤――血。

声が震えた。指先から心臓まで、恐怖が染み込んでいく。本気で、怖い。

「やめろ……林田唯月、お前、狂ってる……上がってこい! 言っとくけど、そんなもんで俺は脅されねえ! ただ気持ち悪いだけだ!」

唯月は残っている力をかき集め、もう片方の手を上げた。そして、...

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