第66章 奥様は社長のことはいらない

その頃、別の場所では――

秘書が何気なくSNSを眺めていた時、不意に林田唯月の投稿が目に入った。

彼はすぐにその画面を矢吹薫へ差し出し、険しい顔で告げる。

「矢吹社長……奥様、本気でもう社長のことはいらないみたいです」

矢吹薫は視線を落とした。

写真の中の林田唯月は、やわらかな光をまとっていた。穏やかで、晴れやかで、ひどく綺麗だった。

こんなふうに肩の力が抜けた彼女を、最後に見たのはいつだったか。

思い返せば、椎名伴凪が戻ってきてからというもの、林田唯月はもう彼に笑いかけていない。

矢吹薫はそのままSNSを開き、反射的に林田唯月のアカウントを探した。だが、どこにも出てこない。...

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