第68章 もういい

林田唯月は目の奥が熱くなり、メッセージを打つ指先が止まらないほど震えていた。矢吹薫に、必死で送り続ける。

【お願い。あの指輪がどうしても必要なの。奪わないで、譲ってくれない?】

【あなたが持ってても意味ないでしょ。私にちょうだい】

返信は、珍しく早かった。

けれど返ってきた一言が、林田唯月を氷の底へ突き落とす。

【伴凪が欲しがってる】

――椎名伴凪が欲しいから。

それだけで、こちらの「必要」は踏みにじられるのか。

林田唯月は番号札を握った手を、ゆっくり下ろした。さっきの入札が、彼女の全財産だった。

もう、これ以上は出せない。仮に金があっても、矢吹薫なら必ず――こちらを上回る...

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