第152章 俺と帰れ

玉井彩歌は俯き、自分の身なりをちらりと見下ろした。

確かに安物だ。けれど着心地はいい。

仕事がない日は、こういう格好のほうが好きだった。

「採血しに来ただけよ。わざわざ着飾る必要でもあるの?」

玉井彩歌が淡々と問い返すと、浅見朝治は一瞬、言葉を失った。

本当は「どうして身なりを整えない」と言いたかったのだ。

だがそんなことを口にしたら、まるで自分が玉井彩歌を気にかけているみたいじゃないか。

それは駄目だ。

最近の玉井彩歌は、もう以前みたいに従順じゃない。ここで「お前は大事だ」なんて気配を嗅がせたら、ますます図に乗るに決まっている。

そう結論づけた浅見朝治は、鼻で笑った。

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