第189章 彼女は知った

「……ママ……」

牧野晴はまだ病室の扉をくぐってもいないのに、目尻がじわりと赤く染まっていった。

藤川園歌はベッドの背もたれに寄りかかり、俯いたまま小さなチャームを作っている。

その声に、園歌の指先がほんのわずか止まった。

顔は上げないまま、淡々と問う。

「どうしたの?」

それが余計に、晴の胸をきゅっと締めつけた。

唇を噛み、もじもじと近づいて、病床の端にそっと腰を下ろす。

園歌は一度だけ晴を見上げ、すぐに視線を落として作業を続けた。

待っても待っても、労わる言葉は降ってこない。

堪えきれず、晴が口を開く。

「ママ……具合、少しはよくなった?」

「うん。だいぶ戻ってき...

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