第25章 唯一の価値

玉井彩歌は熱を帯びたスマホを握りしめたまま、その場で長いこと固まっていた。

やがて――結局、掛け布団をめくり、身体の不調に歯を食いしばりながら起き上がる。着替えを始めた。

その物音で、隣室の進藤雀が目を覚ました。

雀は眠たげに目をこすりながら廊下へ出てくる。コートを羽織っている彩歌を見た瞬間、眠気が半分吹き飛んだ。

「こんな時間に、どこ行くの?」

彩歌はボタンを留める手を止め、まぶたを伏せる。

「牧野晴から連絡が来たの。浅見朝治さん、ひどく酔ってるって……迎えに行く」

その言葉を聞いた瞬間、雀の頭に血がのぼった。数歩で玄関へ駆け、扉の前に立ちはだかる。

「玉井彩歌、正気? 頭...

ログインして続きを読む