第164章 愛してしまったことを後悔する

 目が合った瞬間、小島麻央は無表情に顔を背け、視線を逸らした。

 今泉拓真の心は、不意にちくりと刺された。

 彼は気を引き締めると、長い脚で中へ入ってきた。「何の用だ?」

 田村哲生弁護士が言った。「いえ、何も。ただお二人に腰を据えて、きちんと話し合っていただきたくて。こう睨み合っていても仕方ありませんから」

 今泉拓真は椅子を引き、小島麻央の向かいに腰を下ろした。「話すことなど何もない。俺は離婚しない」

 小島麻央は何も言わず、ただその小さな顔をこわばらせていた。

 本来であれば、彼女の弁護士が相手方と交渉を始めるべき場面だ。しかしその弁護士は、とっくに目の前の男二人から放たれ...

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