彼女を誘惑して、一夜で虜になった

彼女を誘惑して、一夜で虜になった

月見光 · 連載中 · 903.9k 文字

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紹介

結婚して三年——
彼は毎晩、私を抱きながらも、心はいつも“好きな人”にあった。
私は必死に「今泉夫人」としての役目を果たし、
愛のない結婚を繋ぎとめようとしていた。

けれど、妊娠がわかったあの日——
最愛の夫は私を手術台に押しつけて言った。
「小島麻央、子供とお前、どちらかしか生かせない。」
その言葉で、私の世界は雲散霧消した。粉々になった心を抱えて、私はすべてを捨てて去った。
──再会した時、
私はもう、かつての小島麻央ではなかった。
世界を驚かせるほど、美しく、強く、生まれ変わったのだ。跪く元夫が囁く。「麻央、帰ってきてくれ……」私は微笑んで答えた。「ごめんなさい。もう男には興味ないの。」その瞬間、彼は私を抱き寄せ、低く笑った。
「昨夜の君は、そうは言わなかっただろ……?」

チャプター 1

「私たち、久しぶりだね……」

男の薄い唇が小島麻央の耳元に寄せられ、低く掠れた声が蠱惑的に響いた。

「拓真、病院に行かないと……」

小島麻央は追いかけてくる彼のキスを避けた。

「一回だけ!」

時間は無限に引き伸ばされたかのようだった。

小島麻央が気を失いそうになるまで、男は彼女を解放しなかった。

「痛かったか?」耳元で男の低く心地よい声がした。「後で人に頼んで、最新モデルのバッグを買ってやる」

小島麻央はゆっくりと目を開け、彼を見つめた。

彼は整った顔立ちで、その五官は神が創りたもうたかのように完璧であり、冷たく孤高な気質をまとっている。情事を終えたばかりだからか、その美しく無瑕な顔にはまだ情欲の気配が残っていた。

結婚して三年、小島麻央にはわかった。彼は今、気持ちよかったのだ。

だからこそ、こんなにも気前がいい。

小島麻央は力なく笑った。「忘れたの? 私はまだ服役中よ」

「なら出所してから持てばいい」

小島麻央の心は鋭く突き刺された!

彼の口ぶりはあまりにも軽く、まるで彼女の服役がただの休暇だったかのようだ。

「もうすぐ出所だろう?」男の手が慰めるように彼女の頬にそっと触れた。「一年なんてあっという間だと、前から言っていたはずだ」

小島麻央は涙を必死にこらえ、彼の手を掴んだ。声は乾き、絞り出すようだ。「病院から連絡があって、おばあちゃんの具合が少し悪いそうなの。あなた、後で時間ある? 一緒に病院にお見舞いに行ってくれないかな」

彼女は刑務所に服役中で、勝手に外出することはできない。

幸いにも、模範囚だったおかげで一日の特別休暇がもらえた。

朝早くに刑務所を出て、本当はまっすぐ病院に向かいたかった。しかし、祖母に今の姿を見せて心配をかけたくなくて、着替えに一度帰宅したところ、海外出張から戻ったばかりの今泉拓真と鉢合わせてしまったのだ。

彼女は病院へ急いでいたが、男は執拗に体を求めてきて、午前中が丸々潰れてしまった。

小島麻央は、彼に会えたのはむしろ好都合だと思った。一緒に病院に行けば、祖母は彼を見てきっと喜ぶだろう。

だが次の瞬間、男は彼女の手を振り払った。

小島麻央の心に、ぽっかりと穴が空いた!

「午後は用事がある。一人で行ってくれ」今泉拓真は立ち上がり、ベッドサイドテーブルの引き出しからカードを一枚取り出して彼女に渡した。「おばあちゃんに何か食べるものでも買ってやれ」

小島麻央は特に驚かなかった。彼が金で事を済ませようとするのは、これが初めてではなかったからだ。

彼は一度も考えたことがないのだ。祖母が必要としているのは金ではなく、若い夫婦が仲睦まじくしている姿なのだと。

今泉拓真はシャワーを浴びて服を着ると、挨拶もなしに出て行った。

小島麻央は起き上がって簡単に身支度を整えたが、ベッドから降りる時、両足はまだ震えていた。

彼女は小さなワンタンをいくつか包み、祖母に作ってあげるために容器に入れて病院へ持って行った。

病室に入った瞬間、小島麻央は凍りついた。手から袋が滑り落ちる!

「おばあちゃん!」

祖母は体が弱く長年入院していたが、今のように呼吸器をつけられたことは一度もなかった!

小島麻央は駆け寄り、必死に呼びかけた。「おばあちゃん、私よ、帰ってきたの! 目を開けて私を見て、おばあちゃん!」

祖母はかろうじて目を開けた。老いて光のなかった瞳に、わずかな輝きが灯る。「麻央、来てくれたのか……」

「おばあちゃん、どうしたの!」小島麻央は慌てて尋ねた。「看護師さんは電話で、ただちょっと具合が悪くて私に会いたがってるだけだって言ってたのに! どうしてこんなにひどいの!」

「お前を怖がらせたくなくて、看護師さんにそう伝えてもらったんだよ。麻央、おばあちゃんはもう長くない」

「そんなことない!」

小島麻央は急いで祖母の手を取り、脈を診た。

風前の灯火、大限は目前に迫っている。

涙が堰を切ったように溢れ出し、小島麻央の心はナイフで切り裂かれるようだった。

「麻央、生老病死は人の常だ。泣くんじゃないよ」祖母は彼女の顔を撫でた。「おばあちゃんにはお前というこんないい孫娘がいて、この人生に悔いはない。ただ、お前のことが心配で……」

「おばあちゃん、行かないで!」小島麻央は乱暴に涙を拭い、笑顔を作って言った。「あと一ヶ月で出所できるの。そしたら毎日一緒にいられる。ずっと田舎に帰りたいって言ってたでしょ? 病気が良くなったら帰りましょう……」

「ああ」祖母は慈しむように彼女を見つめた。「拓真も一緒に連れておいで。二人で、可愛いひ孫の顔を見せておくれ」

あり得ないとわかっていても、小島麻央は力強く頷いた。「うん、きっとそうしてくれる。本当は今日もお見舞いに来たかったんだけど、グループで急用ができて、彼が処理しないといけなくなったの」

「仕事が一番大事だからね」

祖母は枕の下から半月形の玉の飾りを取り出し、小島麻央の手に置いた。

そこには鳳凰が彫られており、玉質はきめ細かく、触れると温かく潤いがある。滅多にない極上品だった。

「麻央、これをしっかり持っておいで。これはお前の……」

祖母の言葉が終わらないうちに、病室のドアが突然開けられた。

今泉拓真はオーダーメイドの濃紺のスーツに身を包んでいた。すらりと伸びた長身、広い肩幅に引き締まった腰、長い脚という完璧なプロポーションは、歩くマネキンそのものだ。立ち居振る舞いのすべてから、生まれながらの気品が漂っている。

小島麻央はぱっと顔を輝かせた。「おばあちゃん、拓真が来たわ! 拓真がお見舞いに来てくれたのよ!」

今泉拓真はベッドのそばまで来たが、その表情は尋常ではなかった。

普段は冷静沈着で喜怒哀楽を表に出さない彼が、今はどこか緊張し、落ち着かない様子だった。「小島麻央、愛由美が倒れた。すぐに輸血が必要だ」

小島麻央は呆然とした。彼女は、今泉拓真が祖母のために不安になっているのだと思っていた。まさか千田愛由美のためだったとは!

そうだった。この世界で、彼が最も愛する女性は幼馴染の千田愛由美なのだ。彼女に匹敵する者など誰もいない!

小島麻央は胸の鈍い痛みをこらえ、声を詰まらせた。「おばあちゃんがもう……。そばにいてあげたいの。拓真、千田愛由美には血液バンクの血を使ってもらえない?」

「レアな血液型は元々少ない上に、この病院には在庫がない。一番近い血液バンクまで一時間以上かかる。血液が届く頃には手遅れだ」今泉拓真は彼女の手首を掴み、外へ引っ張っていく。「小島麻央、人命がかかっているんだ。お前は行くしかない!」

「おばあちゃんのそばにいたいの! 離して!」小島麻央はもがいたが、無駄だった。

「麻央……麻央!」ベッドの上の祖母が彼女の方へ手を伸ばし、焦ったように口を開いた。「お前の出生について、一度も話したことがなかったね。実はお前は……」

「おばあちゃん!」

小島麻央は病室から引きずり出され、そのまま輸血ステーションへと連れて行かれた。

普通の献血は四〇〇ミリリットルを超えてはならない。しかし今泉拓真は千田愛由美には足りないと言い、問答無用で八〇〇ミリリットルを採らせた。

採血が終わる頃には、小島麻央の顔色はとっくに紙のように真っ白だった。

彼女は虚弱な体に鞭打ち、壁を伝って祖母の病室へ戻った。しかし目にしたのは、すでに停止した呼吸器と、祖母の痩せこけた体にかけられた一枚の白い布だった!

小島麻央の目の前がぐらりと揺れ、足から力が抜け、その場に崩れ落ちた。

泣く力さえなく、ただ必死に祖母へと這い寄る。

「いや……おばあちゃん……お願いだから、私を置いていかないで……」

彼女はベッドのそばに跪き、祖母の亡骸を抱きしめ、身も世もなく泣き続けた。

「小島麻央、ご愁傷さま」

背後から、今泉拓真の低く、感情の籠らない声が聞こえた。「そうだ、愛由美は危険な状態を脱した。ご苦労だったな……それと、刑務所から連絡があった。もう戻る時間だそうだ」

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そして、私はあっけなく捨てられた。

騒ぎ立てることもなく、私は静かに彼の前から姿を消した。
彼から一銭たりとも、受け取らずに……。