第166章 彼女が恋しい

「それほどでもないわ」小島麻央は赤ワインを一口飲んだ。「もう別居してるんだから、隠れる必要なんてないの。帝都に飽きて、少し息抜きしたかっただけ」

「あの頃、卒業してすぐにおばあちゃんを連れて帝都に治療に行ったの。少しでも多く稼ぐために、今泉家で今泉奥様の介護士として働くことにしたわ」

「その後、拓真と結婚して、そして刑務所に入って……考えてみれば、この前のおばあちゃんの命日に実家へ帰ったのが、ここ数年で初めて帝都を離れた時だった」

おかしいことに、せっかく実家に戻ったというのに、今泉拓真とは気まずい別れ方をしてしまった。

田村哲生弁護士はそれを聞いて胸が痛んだ。「小島麻央さん、拓真と...

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