第54章 小島麻央に恋をする

車椅子に座ってはいるが、千田愛由美は念入りに着飾っていた。

有名ブランドのオートクチュールである白いワンピースに、非の打ちどころのない精緻なメイクが施され、彼女の全身をまるで水面に咲く芙蓉のように可憐で艶やかに見せている。

車椅子に乗っていることは彼女の美しさを損なうどころか、むしろか弱さを際立たせ、男性の庇護欲を瞬時に掻き立てるほどだった。

千田愛由美は情熱的な眼差しで彼を見つめた。「拓真、何度も電話したのに、出てくれなかったわ」

「忙しかった。出る暇がなかった」今泉拓真は淡々と言った。「急用なら、内野浩史が俺に伝えてくれるはずだ」

千田愛由美は物分かりのいい様子で口を開いた。「...

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