チャプター 2: ペニー

スタジオの外で吸い込む最初のひと息は、いつだって小さな自由みたいに感じる。空気はここ数か月でいちばん温かくて、冬の刺すような冷たさがようやく薄れて、土と芽吹きはじめた草の匂いがする。歩きながら肩を回すと、右肩が引っかかって思わず顔をしかめた。マダム・ロレットの視線の下で過ごした時間が長すぎたせいだ。

ミラが隣に並び、腰に巻いたスウェットをきゅっと締め直す。「あんたはどうか知らないけど」と彼女は言う。「私、バレエシューズでできたトラックに轢かれた気分」

鼻で笑う。「同感」

「大腿四頭筋が本気で脱走計画立ててる」

「私の魂なんて、アダージョ二回目の時点でもう抜けた」

ミラがうめく。「春のガラを狙わなくてよかった。狙うなら、ちゃんと気にしなきゃいけないし」

横目で見る。「まだわかんない。受ければいいのに」

彼女は乾いた、気にも留めない顔で私を見る。「今日の私見た? バーレで転びかけたんだよ。しかも、ほとんど動いてないのに」

「そこまでひどくなかった」

「ひどかったよ。でもいいの。平均でいることとは和解した」

少し歩幅を落として、バッグのストラップを直す。「平均じゃない。安定してる。自分を追い込まないだけ」

「うん」と彼女は言い、傷ついた様子もない。「だからうまくいくの。プレッシャーなし、崩壊なし」

もう一度肩をさすり、沈黙を一拍だけ私たちの間に落とす。

ミラがちらりと私を見る。「でもあんたはさ。さっきミスってた時でさえ、私たちよりずっと良かった」

首を振る。「それは言いすぎ」

「違うよ。あんた、ただ――動きが違う。床があんたのものみたいに見える」

それに何て返せばいいのかわからない。褒め言葉っていつも変なところに着地する。柔らかすぎて、手の中に乗せられても扱い方がわからないみたいに。

肩をすくめる。「マダムはそう思ってなかった」

「最後は思ってた」

「部屋中の前で私を感情的に解体したあとでね」

ミラは首を傾げ、考え込むように言う。「きついけど。ああいうことするのって、見込みがあるって思ってる子にだけだよ」

空を見上げる。淡い、夕方遅めの青で、縁だけまだひんやりしている。歩道には溶け残りの雪がまだらに残り、陽だまりも不揃いだ。でも匂いは、春がねじ込むように入ってこようとしている匂いだ。全部まだ醜い――けれど、どこか柔らかい。軽い。

縁石で立ち止まる。横断歩道の表示は赤で点滅していた。

「今日、ダメだった」と私は小さく言う。「自分でもわかった」

「タイラーのせい?」

一瞬、言葉が止まる。「……うん」

「話す?」

「迎え、忘れた。また。レッスンのあと」

ミラが長く、ゆっくり息を吐く。「謝った?」

「誰かの勉強手伝ってたって」

ミラは眉を上げたが、何も言わない。

「別に、人生組み替えろって思ってるわけじゃないし」と付け足す。説明する義務なんてないのに。

「うん」と彼女は言う。「でも、あんたのことを覚えててくれたら、うれしいよね」

私たちは道路を渡る。私は彼女を見ない。

「悪気はないんだよ」と少ししてから言う。「ただ……あちこち散らかってるだけで」

「ペン、あいつはさ。あんたが靴の中に血をにじませてる時、同じ部屋にいない。何が必要か、知らないんだよ」

「バレエを理解してほしいわけじゃない」

「わかってる。でも、あんたのことを理解してほしいのかも」

返事ができない。沈黙がまた伸びて、私たちはコーヒーショップの前を通り過ぎ、窓いっぱいに偽物の雪を飾ったままの花屋の前を行く。私はゆっくり、一定の息を吐き、肋骨の奥を押す重みを振り払おうとする。

「でも、決めた」と私はようやく言った。

ミラがこちらを見る。「決めてた」

「あの最後の通し、なんか……合ってた。久しぶりに」

「見てわかった。あんた、戻ってた」

角のベーカリーがすぐ先で、ミラがそっちを指さす。「行こ。柔らかくて、炭水化物たっぷりのやつ、私たちの権利」

扉が開く前から匂いがぶつかってくる――バニラ、砂糖、バター。温かさ。

私たちは考えるより先に注文した。彼女はいつものシナモンロール。私は、分厚いクリームがぐるりと絞られたチョコレートのカップケーキを取る。ばかみたいに見える。だけど、いい。

窓際に座り、また静かになる。外を人が通り過ぎていく――急いでいて、気もそぞろで、騒がしい。ここにいると、それが全部、ずいぶん遠くのことみたいだった。

「自分の何がいけないのか、わからない」ようやくそう言う。ミラにだけ聞こえるくらいの小さな声で。

ミラはぴくりともしない。「壊れてなんかないよ」

「ただ……足元がずっと動いてるものの上に、必死で踏ん張ってるみたいで」

「疲れ切ってるんだよ」

「みんな疲れてる」

「うん」ミラは言う。「でもね、みんながみんな、完璧でいなきゃって重さまで同時に抱えてるわけじゃない」

私はカップケーキをひとかけらちぎって、指の間でころころ転がす。「一秒でも手を離したら、置いていかれそうで」

「置いていかれない」

「どうしてわかるの?」

ミラは、そんなの当たり前じゃない、という顔で私を見る。「だって、もう先にいるもん」

それで、私はしばらく言葉を失った。

私たちはゆっくりと菓子を食べきった。急ぐ理由なんてない。残っているのは痛みと砂糖と、もう一コマ、もう一日を生き延びたという不思議な安堵だけ。

ようやく外へ戻るころには、太陽は低く沈み、金色は少し冷えていた。それでも、ここ数週間でいちばん暖かく感じる。私はそれを、勝ち取ったものみたいに胸いっぱい吸い込んだ。

身体はあちこちが軋む。肩はずきずきする。太腿はすでに、明日の痛みを予告している。それでも私は、足取りだけはぶれずに歩く。

今日は、決められた。

それで――たぶん、それで十分だ。

ミラは眠たげに手を振って自分の区画へ曲がっていき、ラーメンだの風呂だの、あとで連絡がなかったらマットレスに丸呑みにされたと思ってくれ、だのとぶつぶつ言っている。私は笑いながら、そのまま歩き続けた。

授業前以来はじめて携帯を取り出すと、通知の洪水にいきなり叩かれる。

タイラーからのメッセージが十二件。

タイ(午後四時五二分):本当にごめん

タイ(午後四時五四分):俺ほんと最悪

タイ(午後四時五五分):完全に抜けてた――ゾーイが化学のなんかで助けが必要で、そしたらそのまま

タイ(午後四時五五分):そうなって

タイ(午後五時〇〇分):俺バカだ

タイ(午後五時〇三分):埋め合わせさせて

タイ(午後五時〇四分):たぶん今授業だよね

タイ(午後五時〇八分):もう二度と忘れないって誓う

タイ(午後五時〇九分):嫌いにならないで

タイ(午後五時一五分):愛してる

タイ(午後五時一五分):ほんとに

私は立ち止まった。胸の奥で、心臓がばかみたいにふわりと返り、指先でそっと画面に触れる。忘れた。そう。だけど、彼は気にしてる。いつだってそうだ。失敗しても。

タイラーは完璧じゃない。でも、愛されてる以外の何かを感じさせられたことはない。

それに正直言って? 今日走る羽目になったことなんてどうでもいい。誰かほかより、私はこの人を選ぶ。

自分の通りの角を曲がった瞬間、私は凍りついた。

彼が、ポーチに座っている。

私のポーチに。

フードを目深にかぶり、膝の上には紙袋。携帯をスクロールしている。たぶん百回目くらいに、私から返信が来てないか確認しているんだろう。

止める間もなく、笑みがこぼれた。

「ねえ」私は言う。

彼は勢いよく顔を上げ、ほとんど跳ねるみたいに立ち上がった。「ペン」

片手に袋を持ったまま駆け寄ってくる。顔じゅうが謝罪でぐしゃぐしゃだ。「本当にごめん。そんなつもりじゃ――ゾーイを手伝ってたら止まらなくなって、完全に時間の感覚なくして、それで時計見たときに――やばいって、吐きそうになった」

「タイ――」

「行くべきだった。カレンダーに入れてたんだ。リマインダーまで設定してたのに、それを無視するとか、俺ほんとにどうかしてる――」

私は笑って、彼の腰に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。「タイ。大丈夫」

彼は少しだけ身を引いて、私の顔をのぞき込む。「本当に?」

「うん。大丈夫。今こうして来てくれたし」

彼は袋を差し出した。「好きなサンドイッチ買ってきた。あの変にヘルシーなやつ。アボカドとか……芽みたいなの? とか入ってるやつ」

私は中をのぞく。たしかに、自分なら選ばなかった味だ。でも彼は、ずいぶん前に一度私が好きだと言ったことを覚えていた。優しい。彼らしい。

「完璧だよ」私は言う。

彼は、私が二度目のチャンスをくれたみたいに息を吐いて、それからキスをした。短くて、柔らかくて、見慣れたキス。

「起きたら連絡して?」彼が言う。

「もちろん」

彼は一度だけ私の手を握りしめ、階段を降りていく。私は見送る。通りを歩き、私の家から三軒先の自分の家へ入っていくのを。

私はサンドイッチを胸に抱え、にやりと笑った。

だって、私は彼を愛している。

ほかに何も、いらない。

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