第67話ペニー

アッシャーがスタジオの正面に車を寄せる。片手は気だるげにシフトレバーに置かれ、目は、これから潜入でもするみたいに建物を値踏みしている。私は曲がり角も通りも、呼吸するみたいに自然に案内した。この道はもう百回は走っている。なのに、こんなに重く感じたことはない。

スタジオは街でも裕福なエリアにある――駐車禁止の標識が真鍮に彫り込まれていて、歩道にはガムの欠片ひとつ落ちたことがなさそうな、そういう場所だ。心臓が激しく脈打って、歯の奥にまで振動が伝わる。

車を停めると、彼が一度こちらを見る。「中で大丈夫か?」

私は唾を飲み込む。「うん。というか……わかんない」正面の扉に視線をやる。大きなガラス板が...

ログインして続きを読む