第6章

案の定、彼は私へのアプローチを再開した。

コーヒーの手配、ランチの差し入れ、通勤の送り迎え。以前私を追いかけていた時よりも、ずっと熱が入っている。

午後のティータイム。給湯室に向かうと、偶然同僚たちの噂話が耳に入ってきた。

「ねえ、結局小林さんはどっちを選ぶと思う? 石川さん? それともジュリアン?」

「絶対ジュリアンだって! あのフランス人、すごく優しいじゃない。石川さんはお金持ちだけど、なんか冷たそうだし」

「私もジュリアンに一票。石川さんみたいな名家の御曹司なんて、遊びならいいけど結婚相手としてはちょっとね」

私はようやく、特権というものの味を理解した。

なるほ...

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