第7章

病院の廊下というのは、いつだってこの匂いがする。

消毒液と薬の臭いが混ざり合い、吐き気を催させるあの独特な臭気だ。

私は集中治療室の前の長椅子に腰を下ろし、包帯が巻かれた自分の手をぼんやりと見つめていた。

医者の話では、私は軽度の火傷と気道熱傷で済んだらしい。数日休めば回復するそうだ。

だが、石川真逸は違う。

広範囲にわたる火傷、重度の気道熱傷、さらに背中への打撃による外傷。彼が今も生きていること自体、奇跡だと医者は言っていた。

「小林」

顔を上げると、目の前にジュリアンが立っていた。

彼は火事に気づいた瞬間、真っ先に逃げ出したため、怪我一つ負っていない。

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