第5章
落下する最中、私は咄嗟に爪を突き出し、崖の岩肌に激しく突き立てた。石が砕ける。両腕が悲鳴を上げた。だが、落下は止まった。
『私を助ける? 私たちのどちらかを選ぶ?』
『助けなんかいらない。それに、あいつにあの女を助けさせるつもりも毛頭ない』
私は爪を深く食い込ませた。一度、二度。私の中の狼が唸り声を上げる――恐怖からではない。激怒だ。濡れた岩が手のひらを容赦なく切り裂いたが、気にも留めなかった。
頭上のどこかで、声が聞こえた。捜索隊が近づいてきている。風に乗って、リオラのわざとらしいすすり泣きが聞こえてくる。
少しずつ、少しずつ体を這い上がらせ、やがて肘が崖の縁に届いた。次...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
縮小
拡大
