第5章

 落下する最中、私は咄嗟に爪を突き出し、崖の岩肌に激しく突き立てた。石が砕ける。両腕が悲鳴を上げた。だが、落下は止まった。

『私を助ける? 私たちのどちらかを選ぶ?』

『助けなんかいらない。それに、あいつにあの女を助けさせるつもりも毛頭ない』

 私は爪を深く食い込ませた。一度、二度。私の中の狼が唸り声を上げる――恐怖からではない。激怒だ。濡れた岩が手のひらを容赦なく切り裂いたが、気にも留めなかった。

 頭上のどこかで、声が聞こえた。捜索隊が近づいてきている。風に乗って、リオラのわざとらしいすすり泣きが聞こえてくる。

 少しずつ、少しずつ体を這い上がらせ、やがて肘が崖の縁に届いた。次...

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