第132章 普通の女

狩野姫空が狩野茂に目配せする。

狩野茂はすぐに意図を察し、彼女の隣にいる江口ココを指さした。

「君、来て」

江口ココは、夢でも見ているのかと思った。

メイソン本人をこの目で見られただけでも信じられないのに――まさか、自分が指名されるなんて。

狩野姫空がそっと背中を押して、促す。

江口ココは慌てて立ち上がった。

「メイソンさん……あの、ハグ、お願いしてもいいですか」

一度でいい。メイソンと抱きしめ合えたら、もうこの先、悔いなんて残らない。

その瞬間、周囲のファンから抗議の声が一斉に上がった。

自分たちにはそんな待遇、ないじゃないか――と。

正木心歌は、狩野茂が江口ココを選...

ログインして続きを読む