第177章 内通者がいる

正木稲巳がいま最優先で欲しているのは、肝疾患を治す薬の開発だ。

しかも――ノキ研究所に先を越されたくない。

そして正木稲巳には、彼女を攫って、誰にも見つからないように隠し通すだけの力がある。

狩野姫空はスマホを握る手に、ぎゅっと力を込めた。

結婚して七年。

いまの正木稲巳は、日に日に「知らない人」になっていく。

昔から冷たい人だった。

情け容赦がなくて、彼女の気持ちなんて一度も気にしない。

放っておいて、見ないふりをして――。

それが今は、手段を選ばない顔まで見せる。

正木家当主の座って、そこまで大事?

そこまでして、欲しいもの?

「狩野姫空、私たち、これからどうする...

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