第39章 離婚と離職に違いはない

監督と編集者を見送り、個室に残ったのは正木稲巳と林田守萌だけだった。

「稲巳、今回のチャンス、取ってくれてありがとう」

正木稲巳は何も答えない。冷えきった顔には、感情の揺れひとつ浮かばなかった。

林田守萌は彼の様子をうかがいながら、恐る恐る口を開く。

「稲巳……姫空のことで怒ってるの?」

その名が出た瞬間、無表情だった正木稲巳の眼差しが、刃物みたいに鋭くなった。

「まさか姫空と狩野乃亜が、本当に知り合いだったなんてね」

林田守萌は独り言みたいに呟きつつ、わざと稲巳にも聞こえるように続ける。

「それに、あの人たちのそばにいた子ども……前は見たことなかった。口元が姫空にそっくりだ...

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