第76章 正木稲巳が「いいね」を押した

狩野姫空が階段を下りたときには、もう正木稲巳の姿はなかった。

彼女はひとりで近所を探し回る。

まだ数分しか経っていない。遠くへ行けるはずもない。

昼間なら、ここまで不安にはならなかっただろう。正木司朗はもう六歳だ。必要なことは一通り分かっている。タクシーだって呼べるし、道もある程度は分かる。助けを求めることだってできる。

けれど今は夜。外は決して安全とは言えない。

あちこち探しても、司朗の姿はどこにもない。

姫空は正木稲巳に電話をかけた。だがずっと通話中で、まったく繋がらない。

仕方なくメッセージを送る。

『司朗、見つかった?』

――十分以上。返事はない。

見つかっている...

ログインして続きを読む