第11章

発狂した彼は無意識のうちに薬箱をひっくり返してしまった。

白い錠剤が床一面に散らばる。彼は身を屈めて一粒拾い上げたが、その錠剤に触れた瞬間、動きを止めた。

「これは抗拒絶反応薬じゃない……何の効果もない、ただの栄養剤だ」

藤原潔志は瞬時に何かを悟り、顔面が蒼白になった。

「絢子……一体、何があったんだ?」

彼は震えながら家中の隅々まで探し回り、ついに絢子のパソコンの中から、彼女と佐々木教授とのメールのやり取りを発見した。

絢子は京都から戻った後も、来年の古画修復計画について教授と積極的に議論を交わしていた。

「彼女が自殺するはずがない」

藤原潔志は喃々と呟いた。

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