第10章
母の命日を、私がこの世を去る日として選んだ。
この日は、私の誕生日でもある。
二十数年間で、私が誕生日を祝ってもらったのはたった二度だけ。どちらも柚子が一緒にいてくれた。
彼女はケーキを買い、バースデーソングを歌い、プレゼントまで用意してくれた。
その時、初めて誕生日はこんな風に過ごせるものなのだと知った。
私は窓辺に立ち、東京の朝の光が、眠らないこの街を少しずつ照らし出すのを眺めていた。
母が死んだのと同じ日に、私は生まれた。
私が生まれたのと同じ日に、彼女は死んだ。
この皮肉な循環も、今日でようやく終わりを迎える。
胃の痛みがまた襲ってきた。いつもよ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 番外編 陽一
12. 番外編 陽一
13. 番外編 陽一
14. 番外編 柚子
15. 番外編 柚子
縮小
拡大
