番外編 陽一
目が覚めた。
五歳の眠子が少し離れたところに立っている。小さな指先から血の玉が滲み、まつ毛には涙がぶら下がっていた。
彼女は怯えと期待が入り混じった瞳で、こっそりと俺のことを見ている。
——いつからだっただろうか。俺が彼女に冷たくなったのは。
そんな考えが脳裏に浮かび、思い出が潮のように押し寄せ、俺を飲み込んでいく。
眠子が生まれる前、俺はどれほどこの妹の誕生を心待ちにしていたことか。
当時まだ子供だった俺は、毎日母の腹に耳を当て、その中の微かな心音に耳を澄ませていた。
母は畳の上に横たわり、優しく俺の髪を撫でてくれた。
「陽一」
母は穏やかな声で言った。...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 番外編 陽一
12. 番外編 陽一
13. 番外編 陽一
14. 番外編 柚子
15. 番外編 柚子
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