第133章 平穏

命令は命令として、江川陸斗という男は、この点において決して従順な部下とはいえなかった。

電話を切るや否や、彼は森下に向き直った。

「今回の任務、俺が出る」

「犯人は警察を挑発している。おそらく署の内情にも通じているだろう。俺と世奈は出張組だ。顔が割れていない分、動きやすい」

江川は冷静に分析してみせたが、理由はそれだけではない。

彼は以前、メディアに大々的に露出している。あえて自分が隙を見せれば、犯人の標的が自分に向くかもしれない。そうすれば、新たな被害者を減らせる可能性があるからだ。

方針は迅速に決まり、あとは翌日の決行を待つのみとなった。

夜、ホテルへ戻る車中、上山世奈は得...

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