第139章 痴話喧嘩ではない?

上山世奈は、自分の脳裏に浮かんだその考えがあまりに荒唐無稽だと感じていた。

何しろ、森下彰太という男は実直そのもので、非の打ち所がないように見えたからだ。

これまであの「少女」の毒牙にかかり、惨殺された被害者たちが皆、極悪非道で家庭を裏切るようなクズ男ばかりだったとすれば、森下彰太が次のターゲットになる道理などあるはずがない。

江川陸斗は世奈の疑念を瞬時に見透かしたようで、無言のまま自分のスマートフォンを差し出した。

画面には森下彰太の個人情報から、過去に担当した事件のすべてが網羅されている。

江川の権限がなければ、一介の監察医である世奈には到底アクセスできない極秘情報だ。

「森...

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