第164章 双子の兄弟

「奴も恐らく警戒している。今踏み込めば、藪蛇になるだけだ」

江川陸斗は早足で掲示板の方へ向かった。そこには薄汚れた広告チラシに混じって、アパートの賃貸情報がいくつも貼られている。

ここは人通りこそ多いが、都市のエアポケットとでも言うべき古いスラム街だ。数万円のワンルームが密集している。

中には、もっと安い部屋も……。

今日、こうして上山世奈と任務で訪れなければ、家賃一万円の部屋がこの世に存在することなど、一生知らずに過ごしていただろう。

「何? 引っ越すつもり? それとも御曹司様の庶民生活体験ツアー?」

世奈は江川陸斗の顔をじっと覗き込んだ。

江川陸斗は掲示板の賃貸広告を指先で...

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