第5章

 この数日、私は弘人のマンションに「一時避難」しているはずだったのに、それはいつの間にか、言葉にしなくても当然のように続く日常になっていた。黒と白と灰だけでまとめられた、無機質でミニマルな空間。そこに少しずつ、私たち二人の生活の匂いが染み込んでいく。

 オープンキッチンで並んで料理をしていると、調味料を取ろうとした肩がふいに触れ合う。食器を渡すとき、目が合ったままの時間だけが、やけに長く伸びる。

 昨日の夕方は、シンク下の冷水管がぽたぽたと漏れた。弘人は収納から工具箱を取り出し、モンキーレンチの使い方を私に教えてくれた。

 背後からぎゅっと抱き締められる。たくましい胸板が、薄い布越しに...

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