第5章 すべての努力が無駄になる

朝比奈鈴視点

書類の束が、鈍い音を立てて会議テーブルに置かれる。武井悠が例の笑顔――肌が粟立つほど嫌悪感を覚えるのに、彼には私が忠実だと思い込ませるための、あの笑顔――で、それをこちらへ滑らせてきた。

「綾瀬依里、お前のためのもんだ。本当に俺たちの仲間だってことを証明する時が来たぜ」

私は表情を消す。内心では、心臓が激しく打ち鳴らされている。三年の訓練。八ヶ月に及ぶ末端組織での潜入。これが、その集大成だ。

「何をすればよろしいでしょうか?」

「輸送ルート、連絡先リスト、支払いスケジュール。全てそこに入ってる」

武井悠は背もたれに寄りかかり、私の顔を窺う。

「本当の責任っ...

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