第143章 なんで血が出てるの?

伏見行哉が待っていたのは、そのひと言だった。

「いいよ」

そのとき、外のほうで物音がした。しばらくして、すぐに静かになる。

祖母は耳が少し遠い。けれど立花郁葉にははっきり聞こえた。矢島の母親の声だ。

郁葉は指先に力を入れ、伏見行哉を緊張した目で見た。何かされるんじゃないかと、身構える。

だが男は、ただリンゴを手に取っただけだった。

「おばあさんに、リンゴ剥いてあげる」

「うちの清水町はね、香辛料がいちばん有名なんだよ。昔はうちも香料の工房をやってたんだけど、工業化でねぇ……潰れちゃった」

「そうですか。今はみなさん、何を?」

「大きい工場さ。村の半分は工場勤めだよ」

祖母...

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