第115章 五年前の調査

夕食がテーブルに並ぶと、田中春奈はソファに座る男に目を向けた。「お薬は食前? それとも食後?」

「食後だ」

「江口おじさん、ちゃんとお薬飲んで、早く元気になってね」田中克哉が心配そうに声をかける。

「ああ」江口匠海は微笑んだ。

食卓を囲み、江口匠海は箸を取ると、克哉の茶碗に肉をよそってやる。その眼差しは優しく、まるで我が子を見守るかのようだった。

田中春奈がふと顔を上げると、二人の視線が交わっているのに気づく。彼女は慌てて伏し目がちになった。彼が息子に優しくすればするほど、彼を拒むことができなくなってしまう。

夕食後、田中春奈は彼に水を一杯差し出し、同時に礼を述べた。

今回の彼...

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