第119章 問題を検出

艶めかしい甘い気配が、空気中に静かに満ちていく。

「もう帰って。ここに泊まるつもりなら着替えがないと駄目でしょう? お風呂だって入れないじゃない」

田中春奈は以前、彼を怒らせて病気にさせてしまったことを思い出し、少しばかり彼を気遣う気持ちが芽生えていた。

「大野博に持ってこさせる。車に積んであるからな」

男はさも当然のように言い放つ。

田中春奈は、まんまと嵌められたような気分になった。この男、最初から私の家に転がり込むつもりだったのだ。

「……もう勝手にして。あとで大野さんに服を届けてもらって」

田中春奈は妥協した。

江口匠海の深邃な瞳に、瞬く間に笑意が湧き上がる。

「ああ...

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