第17章 比較で彼女を崩壊させる

そのキスは、何の前触れもなく田中春奈の柔らかな唇に落とされた。強引で、乱暴で、強い侵略の匂いを帯びたそれは、まるで彼女を丸ごと呑み込んでしまおうとするかのようだった。

田中春奈の頭の中は真っ白になり、一瞬にして思考能力を失った。

我に返った時、最初の反応は羞恥と怒りだった。彼女はありったけの力で彼を突き放し、その声は怒りと屈辱に震えていた。「江口匠海、何するの! 恥知らず!」

しかし江口匠海は、ただ掠れた声で笑うだけだった。その瞳は昏く、そして深い。

彼は彼女の目を見つめる。その眼差しはまるで、烈火の中に咲く一輪の薔薇を見るかのようで、言葉にできない複雑な感情を宿していた。

田中春...

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