第21章 面会の礼

田中春奈はもがきながら、声に苛立ちを滲ませた。「こんな理不尽な男、見たことないわ!」

目の前の江口匠海はしかし、彼女の言葉が聞こえていないかのように、ただ淡々と車のロックをかけた。

車内に閉じ込められ、息子を迎えに行く時間が刻一刻と迫っているのを見て、田中春奈も彼と揉めている暇はなかった。

彼女は素早くシートベルトを締め、不機嫌な口調で言った。「江口匠海、あなたは私の社長だし、助けてもらったこともあるけど、私の選択を尊重してください!」

江口匠海は前だけを見据え、冷たい声で返した。「言うことを聞けば、俺が手を出す必要もなかった」

「どうしてあなたの言うことを聞かなきゃいけないの?」...

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