第26章 好感全無

田中春奈のその強靭さと自立心こそ、彼が評価している点であり、易々と諦めるつもりはなかった。

来たる日はまだ長い。いつか必ず、彼女を心から納得させて嫁に迎えようと。

その時、再び携帯の着信音が鳴り、彼の思考を中断させた。

着信表示に目をやると、田中由衣からだった。彼は眉をひそめたが、それでも電話に出た。

「もしもし、由衣」

「匠海、怖いの……こっちに来て、そばにいてくれない?」田中由衣の声はか弱く力なく、依存と渇望に満ちていた。

しかし、江口匠海は心を動かされることなく、冷静に断った。「西田さんに行かせる」

「やだ……匠海、さっき五年前のあの夜の夢を見たの。あなたに会いたい、もう...

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