第49章 飲み込むキス

田中春奈はもがき、怒りに満ちた様子で拘束から逃れようとするが、江口匠海の力があまりに強く、為す術もなく隅へと押し付けられてしまった。

瞬間、男の整った顔が間近に迫る。四つの目が交差し、互いの呼吸が感じられるほどの距離だった。

江口匠海の熱い息が田中春奈の顔にかかる。彼女はかっとなって彼を突き放し、低い声で怒鳴った。

「江口匠海、何するつもり?」

「なぜ拓哉のプロポーズを受けた?」

江口匠海の声は底冷えがするほど冷たく、まるで地獄の淵から響いてくるかのようだった。

男の危険な気配を感じ、田中春奈は顔をそむける。

「あなたには関係ないでしょ!」

「どうして関係ない。俺たちは……」...

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