第54章 自分の家のように

見ると、江口匠海が赫然と彼女の大きなベッドに横たわり、ぐっすりと眠っていた。彼の前に回り込むと、その端正な顔は静かで、呼吸も均一。本当に寝入っているようだ。

「江口匠海、自分の家に帰って寝なさい」

手を伸ばして彼に腕を揺さぶってみたが、男は目を覚まさない。思わず二本の指を彼の鼻先に伸ばして呼吸を確かめると、安定していて自然だった。ただ眠っているだけだ。

確か薬局の看護師が、この薬には睡眠成分が含まれていて、飲むと眠くなると言っていた。

まさかこれほど効果てきめんとは! 彼女は一つ息をつく。さて、どうしたものか。このまま彼にベッドを占領させるか、それとも追い出すか。

今夜の彼...

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