第88章 デブだと言われる

「ええ、上のオフィスにいるわよ!」佐藤優奈は頷き、振り返って天井の方を指差した。

田中春奈は小さく頷くと、そのまま二階にある江口匠海のオフィスへと向かった。

「匠海、私きっといい仕事をするから。あなたの期待は裏切らないわ」

江口匠海のオフィスの前に立ち、彼女の胸は緊張と期待で高鳴っていた。

ドアはわずかに開いている。ノックしようと手を上げた瞬間、中から艶めいた笑い声が漏れ聞こえてきた。

その声は鈴を転がすように清らかだが、どこか甘ったるく、媚びを含んでいる。

田中春奈の心臓がドクリと跳ね、無意識のうちにドアノブを握る手に力がこもった。

「ああ、頼んだぞ」

江口匠海の声は低く磁...

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