第26章 千秋

竹内葵は唇をきゅっと結び、視線を落とした。瞳の奥に浮かぶのは、冷たさと、どこか達観したような静けさ。

……別にいい。売るなら売ればいい。

売ってしまったほうが、むしろ都合がいい。

ル・ラント邸宅街のヴィラを取り戻して、貸していた30万も回収する。そのとき新井新菜は、どんな境遇に落ちて、どんな気持ちになるのだろう。

一文無し?

どん底?

……ちょっと楽しみですらあった。

葵が家で二日ほど休んでいるあいだ、庄司優斗は家から一歩も離れずに付き添った。料理を作り、髪を洗って乾かし、細かいところまで気が回る。

家政婦の田中さんが、何度も褒めるほどだった。

彼は最初から最後まで、ずっと...

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