第49章 人に恨みを買ったな

志水寧々視点

同じ店の中だというのに――菅田家の個室では笑い声が弾んでいて、こちらの世界だけが切り離されたみたいに冷え切っていた。

神崎家が押さえた個室。

空気は重く、息をするのすらためらわれるほど張りつめている。

母は私のスカートの裾を直しながら、声をぐっと落として言った。

「寧々。あとでちゃんと気を利かせなさい。神崎健司とたくさん話して。婚約が決まれば、うちは助かるんだから」

「……うん」

返事はしたけれど、頭の中に浮かぶのは、あの日の神崎健司の顔ばかりだった。駐車場で茜音を見た瞬間、魂でも抜けたみたいに呆然として――私が話しかけても上の空。

苛立ちが先に立って、つい口が...

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