第53章 茜音が俺を可愛いと褒める

茜音視点

ベントレーは静かに菅田家の別荘の門前へ滑り込み、そのまま揺れもなく停まった。

藤堂律はシートベルトを外したが、すぐに「降りろ」とは言わない。

身を少しこちらへ傾ける。夜の闇に溶ける眼鏡の奥、海みたいに深い視線が――逃げ場もなく、私を捉えたままだった。

「明日の夜、飯。迎えに行く」

疑問じゃない。宣言。

異論を許さない確信が、声の芯にある。

私は横目で一度だけ彼を見ると、こんなことで揉める気もなく、淡く返した。

「うん」

ドアを押して外へ出る。

背中に刺さる視線が、門をくぐって私の姿が消えるその瞬間まで、ずっと追ってきた。

部屋へ戻り、さっとシャワーを浴びて、楽...

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