第54章 茜音にだけ優しくする

藤堂博文視点

同じ頃――中央病院、最上階のVIP病室。

空気はずしりと重く、息をするだけで肩が凝るようだった。

執事の田中が、丁寧に炊いた薬膳粥を椀にのせて運んでくる。顔には「お願いします」と書いてある。

「旦那様、どうか一口だけでも。朝からずっと、何も召し上がっておりません」

だが俺は病衣のまま背筋をぴんと伸ばし、威勢よく手を払った。

「食わん! 孫嫁が迎えに来て退院する。その時に、あの子が持ってきた飯を食う!」

田中の顔が一瞬、詰んだ。茜音さんはまだ来ていない。つまり飯もない。

それでも言えずに、口を結ぶ。

待たされるのは嫌いだ。

俺は苛立ちをそのまま掴むようにスマホ...

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