第13章 ときめいた一瞬

エラが水の入ったカップを持つ手を、わずかに止めた。

入口のドア枠にもたれたリオンが、真正面からこちらを見て笑っている。

さっきまで野次馬をしていた社員たちは、いつの間にか三々五々に散っていた。スーザンだけが取り残されたように固まり、顔面から血の気が引いている。

「しょ……社長……」

スーザンの声が震える。「わ……私は、その……」

リオンは一瞥しただけで何も言わず、顎を軽く上げた。――先に行け、という合図。

スーザンは救われたように自分のカップを掴み、ほとんど逃げる勢いで給湯室を飛び出した。

エラはカップを作業台に置き、指先でカップの側面を、こつ、こつと二回叩く。珍しく、落ち着か...

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