第51章 俺の恩を忘れるな

十分後、ヴィアンは血相を変えて個室へ駆け戻ってきた。

向こうではリオンとエラがいつの間にか席を外していたが、今のヴィアンにそんなことを気にする余裕はない。

向かいのフランス紳士が、汗だくのヴィアンを訝しげに見てから、心配そうに尋ねる。

「どうしたんだい? 仕事で何かトラブルでも?」

「いいえ」

ヴィアンは引きつった笑みを作った。

「提出予定のデザイン画をアシスタントが傷めてしまって……大したことじゃないです。もう一枚プリントし直せば済むので」

「それならよかった」

男は笑い、切り分けたステーキを彼女のほうへそっと押しやる。

「この店の看板なんだ。食べてごらん。本当にうまい」...

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