第12章

濃墨を溶かしたような黒い瞳の奥で、まるで荒波が巻き起こった。嵐の前触れめいた不穏が渦を巻き、見ているだけで胸の芯がひやりと震える。

藤堂静香の心臓が、どくん、と嫌な音を立てた。視線がわずかに揺れる。

「怜央、私はあなたの母親よ。私の言葉より、今日会ったばかりの小娘を信じるっていうの?」

「それに、もう十七年も前の話でしょう。あの頃は一、二歳だったはずよ? そんなに鮮明に覚えてるわけがないじゃない」

朝比奈澪は冷えた目で静香を見た。

「おばさま、あの研究室で何をしていたか……ご存じですか」

本当に知っているなら、そんな問いは出てこない。

神宮寺玲央は唇をきつく結び、黒い瞳をさらに...

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